ニュースなどで「ギラン・バレー症候群」という病名を耳にしたことはありませんか?
聞き慣れない病気ですが、誰でも発症する可能性がある神経の病気です。
なお、ここでの内容は一般的な情報提供を目的とするもので、診断や治療を指示するものではありません。実際の症状については、必ず医師にご相談ください。
ギラン・バレー症候群は、自己免疫の異常によって末梢神経が障害される病気です。
免疫が誤って自分の神経を攻撃することで、手足のしびれや力が入らないといった症状が現れます。
厚生労働省によると、日本では年間で人口10万人あたり約1〜2人程度が発症すると報告されています。比較的まれですが、年齢や性別を問わず誰にでも起こりうる病気です。
参考:厚生労働省 難病情報センター「ギラン・バレー症候群」
多くの場合、ギラン・バレー症候群は感染症の後に発症します。
代表的なものは以下です。
風邪や胃腸炎などのウイルス感染
カンピロバクター(食中毒の原因菌)
インフルエンザウイルス
EBウイルスなど
研究によると、発症の2〜4週間前に感染症を経験している人が多いとされています(Willison et al., Lancet, 2016)。
免疫が感染症のウイルスや細菌を攻撃する際に、神経の一部と「似た構造」を間違って攻撃してしまうことが原因と考えられています。
足のしびれ、違和感
手足の力が入りにくい
歩きづらい、階段が登りにくい
手足の筋力低下(左右対称に現れることが多い)
顔の筋肉の麻痺(まぶたが下がる、笑顔が作れない)
嚥下(飲み込み)のしにくさ
呼吸筋が弱まり、呼吸困難になることも
特に注意が必要なのは「急速に進行する筋力低下」。数日から数週間で進行する場合が多いため、早期の受診が非常に重要です。
診断には、以下の検査が組み合わされます。
神経学的診察:筋力や感覚の確認
髄液検査:特徴的に「蛋白細胞解離」という所見が見られることがある
神経伝導検査:末梢神経の伝わり方を確認
血液検査:抗体の検出(例:抗ガングリオシド抗体)
ただし、発症初期は典型的な所見が出ない場合もあるため、経過観察と総合的な判断が重要です。
ギラン・バレー症候群は自然回復する例もありますが、適切な治療で回復を早め、重症化を防ぐことが可能です。
代表的な治療法には以下があります。
免疫グロブリン静注療法(IVIg)
自己免疫の異常を抑える目的で、抗体を含む製剤を点滴で投与します。
血漿交換療法(Plasmapheresis)
血液中の異常な抗体を取り除き、自己免疫反応を和らげる治療です。
これらの治療は、多くの国際的な臨床研究で有効性が報告されています。
(Hughes et al., Cochrane Database of Systematic Reviews, 2014)
ギラン・バレー症候群は、適切な治療を受ければ多くの方が数カ月〜1年ほどで回復します。
ただし、
約20%の方は後遺症(筋力低下やしびれ)が残る
約5%の方では重症化して生命に関わる合併症を起こす
と報告されています(Sejvar et al., Neuroepidemiology, 2011)。
そのため、早期発見・早期治療が極めて重要です。
疲れすぎないように休養をとる
回復期は**リハビリ(理学療法・作業療法)**が大切
栄養バランスを意識した食事を心がける
再発はまれだが、体調不良時には早めの受診を意識
→ いいえ、感染症ではないため、人から人へうつることはありません。
→ はい。小児でも発症することがありますが、成人と比べると回復が早い傾向があると報告されています。
→ 明確な予防法はありません。ただし、**感染症予防(手洗い・うがい・食中毒対策)**が発症リスクを下げる可能性はあると考えられています。
ギラン・バレー症候群は自己免疫が神経を攻撃することで起こる病気。
主な症状は「しびれ」「筋力低下」「呼吸や嚥下の障害」。
多くは感染症の数週間後に発症する。
免疫グロブリン療法や血漿交換療法が有効。
適切な治療を受ければ回復が期待できるが、早期の受診が非常に大切。
本記事は一般的な健康情報を提供するものであり、特定の治療法を推奨したり、効果を保証するものではありません。体調に不安を感じた場合は、必ず医師・専門医にご相談ください。
2025/08/07