朝、布団の中で「手がしびれて動かない」「指先がチクチクする」
年を重ねると一度は経験したことがあるかもしれません。放っておくと気になるけれど、病院に行くほどかな…と迷いがち。
今回「夜間の手のしびれ」に焦点を当て、整体師として伝えたい“原因の見立て方”、自宅でできる対処、病院での検査や受診の目安まで、なるべくやさしく解説します。
※本記事は一般向け解説であり、個別の診断や治療を確定するものではありません。必要に応じて医療機関での受診をおすすめします。
夜だけ、あるいは寝起きに強く出るしびれにはいくつか典型的な原因があります。主に次の4つを押さえておけば、読者が自分の症状の目安をつかめます。
親指・人差し指・中指にしびれやチクチク感が出やすく、特に夜間や早朝に症状が強くなるのが特徴です。睡眠中の手首の曲げ・伸ばしや、横向き寝で手を下にしている姿勢が手首内の圧力を高め、症状を誘発すると考えられています。睡眠姿勢と夜間症状の関連を示した研究や、CTSに対する保存療法(夜間スプリント・ステロイド注射など)の系統的レビューが存在します。
小指・薬指のしびれや違和感が主訴なら、肘付近で尺骨神経が圧迫されていることがあります。寝ている間に肘を強く曲げていると症状が出やすく、肘を伸ばしたり枕で保護したりすることで改善することがあります。専門レビューで夜間に肘を伸展する工夫が勧められています。
首の椎間板や骨棘が神経根を刺激すると、腕〜指先に放散するしびれが生じます。しびれの場所や伴う首の痛み、腕や指の筋力低下の有無で疑います。頚椎起源のしびれは、夜間に悪化することもあります。レビューや臨床ガイドで診断のポイントが整理されています。
朝に限らず日中も広くしびれがある、或いは両手足に同時に症状がある場合は、糖尿病やビタミン不足、甲状腺疾患など全身性の神経障害が背景にあることがあります。生活習慣や持病の有無を確認しましょう(該当する場合は内科受診が必要です)。※ここでは専門的検査が必要です。
受診の前に自分でチェックできる簡単な項目を紹介します。これらはあくまで目安です。
しびれる指の場所はどこか?(親指〜中指=手根管、薬指〜小指=尺骨神経)
痛みやしびれは片側だけか、両側か?
首の動作で症状が強くなるか(首をひねったり後ろに反らせたとき)
夜間に手首や肘を曲げたまま寝ている自覚があるか?
朝だけで日中は改善するか、日中も続くか?
糖尿病、高血圧、飲酒習慣、ビタミン剤服用歴など全身の病気はあるか?
簡単な仕分けとして、しびれが「親指〜中指中心」「片側」「夜間に悪化」なら手根管の可能性が高く、逆に「薬指〜小指」「肘に近い違和感」「肘を曲げると増悪」なら尺骨神経を疑います。首の症状や筋力低下があれば頚椎由来を強く疑う材料になります。臨床レビューでもこのような問診・身体所見が診断の出発点とされています。
整体師として読者に安全に勧められる、比較的リスクの低い方法を中心に紹介します。
横向き寝で手首を極端に曲げない、枕で腕を支えるなどの工夫が有効。研究で睡眠姿勢と夜間のしびれの関連が示されています。
肘に体重がかからないようにクッションで保護する(尺骨神経保護)。
手根管症状が強い場合、就寝時に手首をニュートラル(真っすぐ)に保つスプリントをつけることで短期的に症状が軽くなることがあります。ただし、長期的効果は限定的というレビュー報告もあります。
明らかに腫れや発赤があれば冷却や安静で炎症コントロール。ただし慢性的・神経性のしびれには限定的です。
指や手首の軽い運動、肩・首周りの可動性改善は、神経への負担を減らす助けになります。理学療法や整形外科のレビューでも保存療法の一つとして紹介されています。
注意:市販薬やサプリメントについては「効く・治る」と断言することは薬機法の観点からも避けるべきです。個別の薬の使用や注射(ステロイドなど)は医師の判断が必要です。短期的に有効性が示される治療(ステロイド注射等)もありますが、長期効果や副作用の可能性があるため医療機関での相談を勧めます。
自分ケアで改善しない、筋力低下や明確な麻痺(指が動かしにくい等)がある場合は早めに受診を。医療機関では次の検査が一般的です。
問診・触診・整形外科的テスト(Tinel徴候、Phalenテストなど)
神経伝導検査(NCS)・筋電図(EMG):圧迫の部位や重症度を客観的に評価します。
画像検査(X線、MRI):頚椎や肘・手首の構造的問題を確認するため。頚椎由来が疑われる場合はMRIが有用です。
指の脱感覚(全く触れた感覚がない)や筋力低下がある。
日常動作(箸・ボタン操作など)に支障が出ている。
自宅での対処(睡眠改善・スプリント・運動)を数週間試しても改善がない、または悪化している。
これらは神経への継続的なダメージを避けるためのサインです。早めの専門診療をおすすめします。
患者さんの訴えをまず丁寧に聞く(症状の出る時間帯、指の部位、既往歴)。
睡眠姿勢や働き方(手を使う作業の習慣)を一緒に観察し、具体的な生活動作改善プランを作る。
簡単なスプリントの使い方、肘の保護、神経滑走体操などセルフケアを指導する。
「これで治る」と断言せず、改善が乏しければ医療機関(整形外科・神経内科)への紹介をスムーズに行う。研究レビューでも保存療法で改善する患者はいる一方、検査や専門治療が必要な場合もあると示されています。
Q. 朝だけのしびれなら放っておいても大丈夫?
A. 軽度で日中に問題がなければしばらくセルフケアを試すのも一案。ただし筋力低下や日常生活の支障が出てきたら受診を。
Q. 市販のサプリや漢方で治りますか?
A. エビデンスの十分な支持がないものも多く、個別の症状によって効果は異なります。薬や注射は医師の指示のもとで。薬機法・医師法に抵触しないよう、専門医と相談するよう案内しましょう。
朝の「手のしびれ」は単純な姿勢の問題から、神経の圧迫、あるいは全身性の病気まで幅広い原因が考えられます。まずは睡眠姿勢の見直しや夜間スプリント、肘の保護といった安全なセルフケアを試し、それでも改善しない場合や筋力低下がみられる場合は専門医での検査(神経伝導検査・画像検査)を受けることをおすすめします。整体師としては「生活動作の改善」「セルフケアの指導」「適切なタイミングでの医療への橋渡し」を大切にしていきましょう。研究レビューや臨床試験は保存療法の短期効果や診断のポイントを支持していますが、個別の判断は専門家に委ねるのが安全です。
2025/09/18