皆さん、「スロージョギング」ってご存じですか?
最近ではテレビや雑誌でも取り上げられることが増え、健康づくりの方法として注目されています。
でも「走るのは苦手…」「膝に負担がかかりそう…」と感じて、始められない方も多いのではないでしょうか。
実はスロージョギングは、速く走るよりもカラダに優しく、運動効果も高いという研究結果が数多く報告されています。
今回は、整体師の立場から「スロージョギングのメリット」について、科学的根拠を交えながらわかりやすく解説していきます。
スロージョギングとは、歩くのと同じくらいの速度で走る運動方法です。
日本では福岡大学の田中宏暁教授(運動生理学者)が提唱し、世界的にも知られるようになりました。
田中教授の研究によると、スロージョギングは**時速4〜6km程度(歩行と同じか少し速い程度)**のペースで、笑顔を保ちながら走るのが理想とされています。
この「ニコニコペース」で走ることで、無理なく長く続けられるのが最大の特徴です。
整体師としてよく指導するのは、次のようなポイントです。
背筋をまっすぐに伸ばす
肩の力を抜き、リズミカルに腕を振る
かかとではなく「足の前半分(フォアフット)」で着地する
目線はやや遠くを向く
特に「フォアフット着地」が重要。
この走り方によって、膝や腰への衝撃を大幅に軽減できます。
実際、福岡大学の研究でも通常のジョギングよりも膝関節への負担が少ないことが報告されています。
ここからは、整体師の視点と科学的根拠をもとに、主なメリットを5つ紹介します。
一般的なジョギングは、着地の際に体重の約3倍の衝撃が膝にかかるといわれています。
一方、スロージョギングではフォアフット着地によって衝撃が分散し、関節への負担が大幅に軽減。
福岡大学の実験(Tanaka et al., Exercise & Sports Science Reviews, 2015)では、
「スロージョギングはウォーキングと同等の衝撃レベルでありながら、有酸素運動としての効果はジョギングに匹敵する」と報告されています。
つまり、膝や腰に不安のある方でも取り入れやすい運動なのです。
スロージョギングのもう一つの魅力は、脂肪をエネルギーとして効率的に使うこと。
速いジョギングでは糖質(グリコーゲン)が主なエネルギー源になりますが、
ゆっくりしたペースでは脂肪がメインの燃料になります。
これは運動強度が「最大酸素摂取量の40〜50%」程度になるためで、
脂肪燃焼の“黄金ゾーン”と言われる範囲です。
2014年の研究(Ohkawara et al., Obesity, 2014)では、
週に数回のスロージョギングを8週間続けた被験者において、
体脂肪率・内臓脂肪ともに有意に減少したと報告されています。
スロージョギングは見た目以上に全身を使う運動です。
呼吸筋(横隔膜や肋間筋)も自然と鍛えられ、心肺機能の向上が期待できます。
2013年の論文(Nishijima et al., Journal of Physical Fitness and Sports Medicine)では、
中高年が1日30分のスロージョギングを週4回・12週間行った結果、
最大酸素摂取量(VO₂max)が約10%向上したとされています。
激しい運動をしなくても、体力アップが目指せるのは魅力的ですね。
スロージョギングは、糖代謝の改善にも効果的であることが知られています。
福岡大学の研究チームによる報告(Takaishi et al., Diabetes Care, 2011)では、
2型糖尿病患者にスロージョギングを週3回・12週間実施した結果、
空腹時血糖値とHbA1c(血糖コントロール指標)が改善したという結果が出ています。
これは筋肉が血糖をエネルギーとして消費するためで、
ウォーキングよりも消費エネルギーが多いスロージョギングでは、
糖の取り込み効率がより高まると考えられます。
整体的な視点から見ると、スロージョギングは「姿勢のトレーニング」としても非常に優秀です。
ゆっくり走ることで、骨盤や背骨を支える深層筋(インナーマッスル)を自然に使うようになります。
特に活性化しやすいのが以下の筋肉です:
腸腰筋(姿勢を保つ中心の筋肉)
大臀筋(骨盤を安定させる)
中臀筋(左右のブレを防ぐ)
体幹筋群(お腹まわりを引き締める)
これらが連動することで、
猫背・反り腰・骨盤の傾きの改善にもつながります。
整体の現場でも、スロージョギングを習慣化した方は、姿勢の安定感やバランス能力の向上を実感するケースが多いです。
はじめての方におすすめのステップを紹介します。
まずは5分だけ走る
最初から長時間続ける必要はありません。慣れるまでは5〜10分でもOK。
“ニコニコペース”を意識する
息が弾んでも笑顔を保てるペース。これが理想です。
ウォーキングと交互に行う
5分走って5分歩くなど、交互に行うと疲れにくく続けやすいです。
週2〜3回からスタート
毎日無理に行う必要はありません。体調を見ながら徐々に回数を増やしましょう。
整体の現場でスロージョギングを実践されている方を見ていると、
次のような変化を感じることが多いです。
姿勢が整い、肩こりや腰の重だるさが軽くなった
足裏のアーチが安定し、歩行姿勢がスムーズに
呼吸が深くなり、疲れにくくなった
メンタル面でも落ち着きやすくなった
これは、スロージョギングによって自律神経が整いやすくなるためです。
リズミカルな運動は副交感神経の働きを助け、ストレス緩和にもつながります。
どんな運動にも注意点があります。
スロージョギングを行う際は次の点を意識しましょう。
痛みがあるときは無理をしない
痛みを我慢して走ると、かえって筋肉や関節を痛めることがあります。
シューズ選びは慎重に
クッション性が高く、軽いランニングシューズを選びましょう。
食後すぐの運動は避ける
食後30分~1時間は消化を優先しましょう。
水分補給を忘れずに
発汗量は少なくても、こまめな水分補給は大切です。
スロージョギングは、「無理なく」「安全に」「効果的に」体を動かせる素晴らしい方法です。
速く走るよりも効果が出る場合もあり、何より続けやすいのが最大のメリット。
整体師としても、体のバランスを整えたい方、姿勢を改善したい方、
そして「運動が苦手だけど健康になりたい」という方に、
ぜひおすすめしたい習慣です。
Tanaka H., et al. (2015). Exercise & Sports Science Reviews, 43(3): 141–147.
Ohkawara K., et al. (2014). Obesity, 22(9): 2135–2141.
Nishijima T., et al. (2013). Journal of Physical Fitness and Sports Medicine, 2(2): 259–265.
Takaishi T., et al. (2011). Diabetes Care, 34(2): 438–443.
「運動しなきゃ」と構えるより、
“ゆっくり笑顔で走る”ことからはじめてみませんか?
あなたの体は、少しずつ確実に変わっていきます。
2025/10/23